アニマリスにはかわいい娘と,世界で最も高く跳ぶ事ができるという虚勢を除いたら,あまり特徴のないカエルだった。黒灯森の動物たちを集めては,自分の偽りの武勇伝を自慢する事が好きなアニマリスは,自慢話をし過ぎて疲れて昼寝をしていた。
口を大きく開けて寝ているアニマリスを面白く眺めていた雷鳥は,愚かにもその口に入ってみようと思った。口の中に入った雷鳥の足が,アニマリスの歯に触れた瞬間,アニマリスはビリビリっとする感覚を受けて反射的に口を閉じてしまった。そしてなんと雷鳥を呑み込んでしまったのだ。
その時,近くを歩いていた帝国軍の憲兵たちがその光景を目撃したため,鳥を呑み込んだ罪でアニマリスは眠ったまま逮捕された。一度眠ったら何があっても気づかないくらい眠りの深いアニマリスは,判決を受けている時でさえ目が覚めなかった。とうとうアニマリスは,裁判長の判決を言い渡すハンマーの音がするまで目を覚まさなかった。目を覚ました時には,希少保護種であるまだ幼い小鳥を帝国の領土内で許可なく狩りをしたことと,帝国の市民ではないものの,公正さのために設けた裁判場でずっと寝てしまうなど,法廷を侮辱した態度を理由に1000年間,硫黄監獄で労働するという判決が下されていた。
しかし,アニマリスは悲しんだり慌てたりしなかった。雷鳥を呑み込んだおかげで得られた電気の力と,自分の自慢話を聞いてくれる囚人達をとても気に入ったからである。たまに娘に会いたくなる時があるが,神秘的な画家が描いてくれた娘の肖像画を見る事で十分だった。
いつものようにアニマリスは就寝時間が近づくと,口を大きく開けて漫談の準備をしていた。口の運動を終えた後,娘の肖像画を見て安否を確認することも忘れずにいた。その肖像画は一度描かれた姿を現在の姿に変化して見せてくれる神秘的な肖像画だった。ところが,今日は何か変だった。アニマリスは両目をこすりながらもう一度肖像画を見た。かわいいカエルが描かれているはずの肖像画は,小さな人間の子供の絵に変わっていた。
娘に何かが起きたに違いない。自慢話をしながらここで楽しんでいるわけにはいかない。アニマリスは腰に肖像画を付けると,脱獄を決心し,地下深くの独房から駆け出すと,なぜか看守の一人とも出くわさずに地上に辿り着いた。
しかし脱獄が成功したことには理由がある。アニマリスのでたらめな自慢話は,聞かされる囚人たちにとって退屈で,退屈で退屈で,もはや地獄のような苦しみを与えていた。地獄の自慢話によって,死者が出ることもあった。
娘に会うために急いで走り去って行くアニマリスを見届けると,看守たちはわざと開けておいた監獄の扉を固く閉めた。看守は囚人たちに,アニマリスが脱獄したことを伝えると,囚人たちは歓声を上げた。
「万歳~!万歳~!アニマリスが脱獄した~!万歳~!」掟に厳しい看守たちだが,囚人たちのこの騒ぎは特別に許すことにした。
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